クピドの窒息
 


初めてできたカノジョには、ずっと前から片想いをしていて。

付き合い始めの頃なんて、毎日のように惚気てきて。
そしてちょっと仲違いすると、すぐ私に甘えてくる。


  ねえエリ、どうしよう。
  俺、どうしたらいい?



――そんなの、


「とっとと別れちまえばいいのになー」
「……っ、」

弛緩した声で、坂田が笑う。

「なんてね。くっつけた分際でそんなアドバイスしたら、牧野クンに嫌われちゃう?」


くつくつと。
掠れた声も、細く長い腕も、包み込むような生温い体温も、全部が私を嘲笑い弄ぶ。

私は、この男のこういうところが、嫌いだ。


 
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