シークレット・ガーデン


8歳年下の弟・貴文の幼馴染みの女の子にこういうタイプがいた(母の情報では、高校時代の貴文はその子と交際していたが、結局振られてしまったらしい)


舞台女優だったという前妻がどんな顔をしているのか知らないけれど、渚は間違いなく父親の司似だ。


「渚ちゃん、きっとすごい美人さんになるよ。パパに似て背が高くなったら将来モデルさんかな?」


「ほんと…?」


真彩の言葉に渚は女の子らしく、はにかんだ。


ちゃらり、と金属の小さな音がして、真彩は振り向く。

司が立ったまま、目を伏せて右手首から男物にしては華奢な銀色の腕時計の留め金を外していた。


何気ないその仕草に、真彩の目は釘付けになってしまう。

司の手は長くてしなやかだ。
指輪も何もしていない指も。


リビングの入り口に置かれた木製のポールスタンドには、子猫のキャラクターの付いた水色のリュックとレモン色のスモックが掛けてあり、司が一児の父であることを実感する。





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