シークレット・ガーデン
「…うん。もう会社には退職願出した。叔父が島で観光農園やっててさ。
叔父夫婦には子供がいないんだ。俺の実家は土建屋だけど、兄貴たちが手伝ってるし、三男坊の俺に後継いで欲しいって言うんだ。
宮古から母親が来たのは、その話をするためだったんだ」
「そうなの…」
…司が故郷に帰ってしまう……
大事なものが、するりと手のひらから抜けていってしまうような気がした。
「俺が仕事で、毎日よる遅くまで渚をシッターに預けてるだろ。
宮古では、父親も兄貴たちも含めて皆がすごく渚のこと心配しててさ。
そんなことやめろっていうんだ。
いつまでも渚が小さいわけじゃない。小学生になって、一人で留守番なんかさせる生活になったら可哀想だって。
宮古なら親兄弟親戚も一杯いるし、寂しい思いもしないで済むって」
「そうね…」
真彩にも、司の母親達が遠く離れて暮らす孫娘を心配する気持ちはよくわかる。
司が渚に惜しみなく愛情を注いでいて、一生懸命なのはわかる。
でも、補いきれていなかった。何かが欠落していた。
渚が男の子であれば、少し違ったのかもしれない。