シークレット・ガーデン
「うん。10月にね。
一昨日からこっちに来てるの。
お正月、理亜が病気しちゃって、帰れなくって。またには孫の顔見せなくちゃ。私もこうして、息抜きがしたいし」
「あ、理亜、元気?もう卒乳したの?」
「うん。もうちょっといいかなって思ってたんだけどね〜………
もう吸う力が強くて乳首が痛くて限界だった。
おっぱいにバイキンマンの似顔絵書いて、バイバイキンしよ〜とかやったよ。
でも最終的に効いたのは、昔ながらの乳輪に辛子ちょびっと塗る方法!」
「マジで?うちなんか最初っから哺乳瓶からミルクだったからなあ…」
公衆の面前で、おっぱいだの乳首だの普通に発音する真彩に、優美子の顔が一瞬赤らむ。
内心動揺しつつも、平静を装っているのがわかった。
「でも、いざ離れちゃうとちょっと寂しくて。
吸ってもらいたくなっちゃうの。我慢我慢ってこっちが耐えてる感じ……」
「なんか分かるよ。
どっかでいつまでも赤ちゃんでいて欲しいって気持ちあるんだよな…」
こんな話題には入れないのに、優美子は笑顔を崩さず司と真彩の会話をそばで聴いていた。
けれど、ちらり、と腕時計を気にしたのを真彩は見逃さなかった。