シークレット・ガーデン


真彩はよく、絵本を読んでやる。

そうすると、理亜は耳を澄ますようにして、じっと真彩の口元を見つめる。



ーーー赤ちゃんって、大人の発する言葉を、こうやって覚えていくんだな……


真彩は、子供の成長の過程を目の当たりにして、親になったことを実感した。



ここへきてやっと、光俊の理亜を抱く手付きもサマになってきた。


理亜のおしっこのおむつぐらいなら替えられるようになった。


相変わらず、着替えやうんちのおむつ替えはパスだけれど…


もう、どんなに遅くなろうとも、迎えの車を真彩に頼むことなどない。




空は澄み渡って青かった。


こうして、親子3人で池のある公園を散歩する春の午後のひと時は、真彩に満ち足りた幸福感をもたらした。



ーー司も今頃、横須賀の海辺で同じ空を見ているのかも…


この頃の真彩の心の中には、いつも司がいる。何かの拍子にふと、司を想う。


この雲ひとつない青空を見上げた時も。


司も光俊と同じく、土日休みだ。


金曜の電話で、土曜は家の掃除やら洗車をして、日曜は、渚と横須賀の海釣り公園に釣りに行くと言っていた。


司の趣味は釣りとサッカーだった。





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