シークレット・ガーデン

「こんばんは。理亜。はじめまして」


運転席から司は身を乗り出し、戯けた感じで、真彩にしがみつく理亜に挨拶をする。


人見知りしない理亜は、体調の悪さゆえに笑いこそしなかったけれど、一瞬、司の方へ握手を求めるかのように、
小さな手を伸ばした。


「可愛いなあ。
真彩によく似てるなあ」


司は人の良い笑顔を見せる。

司の少し目尻の吊り上がった眼は普通にしてると、生意気そうに見えるが、笑った途端、目尻に優しい皺が生まれ、たまらないギャップを生み出した。


昔、司をよく『キリン君』と呼んでいたっけ……


そんな全然関係のないことを、ふと思い出す自分に真彩は苦笑した。


司のステップワゴンは、スムーズに行けば30分程で到着するはずの夜間救急を目指す。


「思ったんだけど、理亜さあ、突発性発疹じゃね?
もちろん、はっきりとは言えないから、診てもらうに越したことはないけど」


ハンドルを持ち、前を見ながら、司が言った。


「あ…」


真彩もその病名は知っていた。

たまに買う赤ちゃん雑誌に、発症した赤ちゃんの記録が写真付きで載っていたのを、ついこの間読んだばかりだった。



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