イケメンルーキーに恋をした


最初はただの無愛想な人だと思ってたけど、よく見たら最近本当に表情を変えるんだなと思った。


……よく見たら?


あたしそんなに田尾くんのこと見てるのか……?



ようやく長い式も終わり、暑さで疲れきった生徒たちが一斉に体育館から渡り廊下へと抜けだし始めた。


一気に騒がしくなった声が、セミの鳴き声と重なり大合唱になる。


あたしはさおりと一緒に生徒の波に飲み込まれないように進む。


「神村!!」


背後から呼ばれ、あたしは背伸びをしながら振り返った。


「先輩ッ!!」


大声で叫ばないと、チビのあたしの声なんてみんなの体に返されて後ろまで届かない。


「ちょっと横に抜けて!」


岩石先輩は、クイクイッと人差し指で渡り廊下の外を指した。


あたしはさおりに手を引かれながら、人の波を横切る。




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