イケメンルーキーに恋をした
あたしが叫ぶと、周りにいた何人かがあたし達を振り返って目を丸めた。
またあたしはやり辛くなって、身を縮める。
何をしても、悪い方向に行く。
こんなところで田尾くんと口げんかをしていたら、新たに変な噂が立って、もう学校にすらこれなくなるかもしれない。
あたしは早くここから逃げ出そうと、田尾くんの横をすり抜けた。
はずなのに……。
ガシ……ッ。
強く掴まれた、手首。
あたしは、田尾くんに掴まれた手首を見てから、田尾くんを見上げた。
「また逃げるの?」
田尾くんの一重の鋭い目が、あたしを見据える。
必死に涙を堪えた。
"また逃げるの?“
何も言い返せない。
確かにそうだから。
あたしは、また逃げようとした。
この空気が怖くて、早くひとりになりたかったから。
逃げて、時間を無駄にしようとしたんだ。