イケメンルーキーに恋をした


田尾くんは、しばらくあたしをジッと見下ろしたあと、あたしの手を強く引いて靴箱から出た。


立ち止まろうと足に力を入れても、田尾くんの力には勝てず引きずられるようにして進む。


「ちょ!! どこ行くの?放して!!」


あたしの抵抗なんて、田尾くんには全くきいていないようだ。


田尾くんはある場所まであたしを引っ張って行き、そして、ピタリと立ち止まった。


あたしを振り返り、女バスの部室を顎で指す。


「逃げないで、しっかり話をしてきて下さい」


あたしは部室のドアの上に書いてある”女子バスケット部部室“の文字を見上げてつばを飲み込む。


足が震えた。


心の準備が出来ていないし、言いたいこともまとまってない。


それなのに、急に話をしてこいだなんて……。


「今まで散々悩んだんでしょ?」


「…………」


「先輩のありのままの気持ちを話すだけじゃないですか」


サラリと言う田尾くん。




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