beautiful love ★ 俺様boyと天然girl
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――早手Side――
「ただいま」
玄関のドアを閉める。
後ろから母さんが何か言っていたけど、返事をする気にもなれなくて、そのまま階段を上がった。
部屋に入って。
乱暴にドアを閉める。
「…………っ」
頭から離れない。
神社に着いた時の光景が。
何度消そうとしても、また浮かんでくる。
慎と。
あいつ。
「……くそっ」
ベッドに座って、髪をぐしゃっと掴む。
俺がどんだけ探したと思ってんだよ。
人混みの中、どこにもいなくて。
電話して、やっと居場所が分かって。
今行くから動くなって言って。
走って。
やっと見つけたと思ったら。
「…………」
また腹が立ってくる。
慎にも。
あいつにも。
自分にも。
慎があいつのことをどう思ってるかなんて、今まで考えたこともなかった。
いや。
考えたくなかっただけなのかもしれない。
昔から距離は近かった。
普通に触るし。
抱きつくし。
あいつも慎には警戒しねぇ。
それが慎だからって。
ずっとそういう奴だからって。
今までは流してた。
でも。
『俺だって……ずっと我慢してんだよ』
慎の声が蘇る。
「…………慎」
あんな顔。
初めて見た。
中学からずっと一緒にいて。
くだらねぇことで笑って、喧嘩して、毎日のようにつるんできた。
だからこそ。
分かってしまった。
あれは。
冗談で言ったんじゃない。
「……ふざけんなよ」
俺が知らなかっただけで。
あいつはずっと――
そこまで考えて、やめた。
考えたくねぇ。
慎がどう思ってようが。
そんなの関係ねぇ。
あいつは俺の彼女だ。
なのに。
『慎は悪くないの!』
さっきの声が頭に響く。
「…………」
何で庇うんだよ。
足が痛かったから。
休ませてくれたから。
そんなの。
分かってる。
慎が無理やりここに連れてきたわけじゃないことくらい。
少し考えれば分かる。
それでも。
あの状況で慎を庇うあいつを見たら。
何も考えられなくなった。
『……浮気女』
自分が吐いた言葉まで蘇る。
「…………っ」
ベッドに倒れ込む。
言いすぎた。
そんなことくらい。
分かってる。
あいつがあんなことするような奴じゃないことも。
俺が一番知ってる。
でも。
今さら戻れるわけねぇ。
あんなこと言って。
あいつを置いて一人で帰ってきて。
どんな顔して戻れっていうんだよ。
「…………」
身体を起こして、窓を見る。
カーテンは閉まったまま。
その向こうは。
あいつの部屋。
いつもなら。
何も考えず開けるのに。
今日は手が動かなかった。
「……くそ」
目を閉じる。
なのに今度は。
今日のあいつが浮かぶ。
浴衣着て。
いつもと髪も違って。
俺を見て。
『変かな?』
変なわけねぇだろ。
玄関から出てきた瞬間。
普通に見惚れた。
可愛かった。
すげぇ可愛かった。
なのに。
俺が言ったのは。
『変だ』
「…………」
それから。
慎の声。
『水乃! 超可愛い!!』
あいつは。
俺が言えなかったことを簡単に言う。
綿あめ買って。
笑わせて。
挙げ句の果てに。
『可愛いでしょー♪ 俺の彼女♪』
「…………っ」
思い出しただけで腹が立つ。
冗談だったとか。
そんなのどうでもいい。
俺の前で。
俺の彼女に。
「……俺だって」
可愛いって思ってた。
慎なんかに言われなくても。
ずっと。
なのに俺は。
何一つまともに言えなくて。
最後には。
一番言っちゃいけねぇことを言って。
置いて帰ってきた。
「…………」
もう一度、窓を見る。
開けたい。
あいつが帰ってきたのか。
ちゃんと帰れたのか。
足だって痛いって言ってた。
「…………」
そこまで考えて。
また慎の顔が浮かぶ。
どうせ。
あいつが一緒なんだろ。
「……っ」
胸の奥がぐちゃぐちゃになる。
慎に触られんのも嫌だ。
慎と笑ってんのも。
慎を庇うのも。
全部。
「……お前は俺のだろ」
誰もいない部屋で。
小さく呟く。
「他の男なんか見るなよ……」
返事なんて。
あるわけなかった。