beautiful love ★ 俺様boyと天然girl

テスト

夏休みが終わって。

学校が始まってから、数日。

長かった休みも終わってしまえばあっという間で、朝起きるのはまだ少しつらいけど、学校のある毎日にもようやく身体が慣れてきた。

そんな日の授業終わり。

「はい、今日はここまで」

先生が教科書を閉じる。

その声を聞いて、私も机の上のノートを閉じようとした。

「……あ、そうだ」

先生が思い出したように顔を上げる。

「明日、テストするからね」

「…………」

一瞬。

教室が静まり返った。

「……え?」

誰かが声を漏らした直後。

「ええええええっ!?」

教室中から一斉に声が上がった。

「先生、聞いてない!」

「急すぎるー!」

「明日!?」

「そう、明日」

みんなの反応なんて予想していたみたいに、先生は笑ってる。

「夏休み明けだし、みんながどれくらい覚えてるか確認するだけ。国語と数学と英語ね」

国語。

数学。

英語。

「……数学」

一番聞きたくなかった教科に、思わず机へ突っ伏した。

「水乃、死んだ?」

すぐ近くから聞こえてきた声に、顔だけをそっちへ向ける。

宗太がこっちを見ながら笑っていた。

「……死んだ」

「ははっ、まだ始まってもねぇって」

「数学がある時点で終わったの!」

「そんな苦手だったっけ?」

「苦手だよ! 宗太は?」

「まあ、何とかなるんじゃね?」

「……裏切り者」

「何でだよ」

宗太がまた笑う。

「水乃、赤点取ったらジュース奢ってやるよ」

「何で取る前提なの!?」

「その顔見たらなぁ」

「じゃあ宗太も取ってよ」

「嫌だよ。巻き込むなって」

そんな話をしている間にも、先生への抗議はまだ続いていた。

「はいはい、そんなに騒がないの。文句を言っても明日はちゃんとテストするからねー」

「先生、急すぎるー!」

「夏休み中にちゃんと勉強してたなら大丈夫でしょ?」

「してませーん!」

教室のどこかから元気な声が飛ぶ。

「そこは自信満々に言わないの!」

教室に笑い声が広がった。

でも。

私は笑ってる場合じゃない。

数学。

本当にどうしよう。

◇

休み時間。

「水乃、大丈夫なのかぁー?」

優希が私の席までやって来る。

「……数学が大丈夫じゃない」

「だと思った」

「優希はいいよね。全部できるもん」

「ちゃんと勉強すれば水乃だってできるって」

「それができないの」

「俺も数学終わったー」

近くを通った慎が、当たり前みたいに会話へ入ってくる。

「慎も?」

「俺なんか水乃よりヤバい自信ある」

「そこで張り合わないでよ」

「じゃあ今日、勉強する?」

優希の一言に。

私と慎が同時に顔を上げた。

「する!」

「俺も!」

それを聞いていた真澄も、近くから口を挟む。

「数学なら教えるけど」

「真澄!」

「神様!」

「慎は大げさ」

「じゃあ場所どうする?」

優希が言ったところで。

慎の視線が。

少し離れた席にいる早手へ向いた。

「早手ん家でよくね?」

「嫌」

聞こえていたらしい。

早手が即答する。

「いいじゃん。みんな行ったことあるし」

「それ関係ねぇだろ」

「私も早手ん家でいい」

優希まで乗っかる。

「勝手に決めんな」

「俺もそれでいい」

真澄。

「お前まで乗んな」

私も早手を見る。

「いいじゃん、早手」

「嫌」

「何で!」

「お前と慎が絶対うるせぇから」

「何で私まで!?」

「水乃も大概だろ」

慎が笑う。

「慎に言われたくない!」

「はい、じゃあ決まりね」

優希が笑いながら話を終わらせる。

「決まってねぇ」

「放課後、一回帰ってから集合な!」

「慎、勝手に――」

「お菓子持ってく!」

「話聞けよ」

結局。

四人に押し切られた早手が、最後には面倒くさそうにため息をついた。

「……騒いだら追い出すからな」

「はーい」

「特に慎」

「何で俺!?」

「水乃も」

「何で!?」

早手の家での勉強会が。

ほとんど本人の意思とは関係なく決まった。
< 195 / 394 >

この作品をシェア

pagetop