beautiful love ★ 俺様boyと天然girl
放課後。

一度家に帰って着替えてから、教科書とノートを鞄に詰めて家を出る。

そして、そのまま隣の神崎家へ向かった。

ピンポーン。

少しして、玄関の扉が開く。

「……何してんの?」

出てきた早手に、いきなりそんなことを言われた。

「え?」

「何で今さらインターホン鳴らしてんの?」

「……なんでって、来たから?」

「いつも勝手に入ってくんじゃん」

「勝手にって言い方やめてよ!」

「だってそうだろ」

「今日は勉強会だから、一応ちゃんとしようかなって思ったの!」

「何だよそれ」

早手が呆れたように笑いながら、玄関を大きく開ける。

「ほら、入れば」

「言われなくても入るもん」

「じゃあ最初から入れよ」

「もう!」

靴を脱いで、そのまま二階へ上がる。

神崎家に来ることも、早手の部屋に入ることも、私にとっては今さら珍しいことじゃない。

「みんなは?」

「まだ。もう来るんじゃね?」

「慎、ちゃんと来るかな」

「来なくていい」

「ひどっ!」

「うるせぇから」

「まだ来てもないのに!」

そんなことを話しながら早手の部屋へ入って、いつものように鞄を置いた。

少しすると優希と真澄もやって来て。

最後に慎がコンビニの袋を片手に、勢いよく部屋へ入ってきた。

「お待たせー! 差し入れ買ってきた!」

「勉強道具は?」

優希に聞かれて、慎の動きが止まる。

「…………玄関」

「何で?」

「差し入れ持ったら鞄忘れた」

「何しに来たの?」

「取ってきます!」

入ってきたばかりの慎がまた部屋を飛び出していって、思わずみんなで笑った。

それから、机いっぱいに教科書とノートを広げて勉強会が始まった。

「まず数学からね」

「えー……」

「えー……」

私と慎の声が綺麗に重なる。

「お前ら、ほんと同レベルだな」

早手が笑う。

「一緒にしないで!」

「水乃ひどっ!」

「じゃあ二人とも、これ解いて」

数学が得意な真澄に問題を出され、私と慎で同時にノートへ向かう。

「…………」

分からない。

ちらっと横を見ると、慎もシャーペンを持ったまま止まっていた。

「水乃」

「なに?」

「分かる?」

「……分かんない」

「よかったぁー」

「何がよ!」

「仲間じゃん」

「嬉しくない!」

「喋ってないで解けよ」

早手に言われて、むっとして顔を上げる。

「早手は英語やってて!」

「お前に言われなくてもやってる」

「じゃあ見せて」

「嫌」

「なんで?」

「いいから数学やれ」

怪しい。

そう思っていたら、早手の問題集を見ていた優希が口を開いた。

「早手、ここ間違ってるよ」

「…………」

「ここも」

「…………」

思わず笑ってしまう。

「早手も全然できてないじゃん!」

「うるせぇ」

「人のこと言えないじゃん!」

「お前よりはマシだろ」

「またそれ!」

結局。

数学は真澄に教えてもらって、早手は優希に英語を教えてもらいながら、なんだかんだで勉強はちゃんと進んだ。

「……できた!」

さっきまで分からなかった問題が解けて、思わず声が出る。

「どれ」

早手にノートを見せると、少しだけ覗き込んだ。

「……合ってる」

「ほんと!?」

「一問で喜びすぎ」

「だって分かんなかったんだもん!」

「じゃあ次もやれ」

「ちょっとくらい褒めてよ」

「はいはい。すごいすごい」

「絶対思ってない!」

「思ってるって」

「その言い方が思ってない!」

「お前ら、勉強しろよ」

慎に言われて、早手と一緒にそっちを見る。

「慎に言われたくない!」

「何で俺!?」

またみんなで笑って。

気づけば、窓の外は暗くなり始めていた。

「そろそろ帰ろっか」

優希が時計を見ながら立ち上がる。

「俺も帰る」

真澄も教科書を鞄へしまい始める。

「じゃ、俺も帰ろー」

慎も大きく伸びをして立ち上がった。

「あ、じゃあ私も――」

「お前はダメ」

「…………え?」

鞄に手を伸ばしかけたまま、早手を見る。

「なんで!?」

「まだ数学終わってねぇだろ」

「続きは家でやるよ!」

「絶対やらねぇだろ、お前」

「やるもん!」

私と早手が言い合っていると。

「じゃあ俺も残る〜!」

慎が、持ち上げたばかりの鞄をもう一度床へ置いた。

「俺も数学終わってないし、水乃と一緒にやろーっと」

「お前は残っていいって言ってねぇ」

「何でだよ! 水乃はいいじゃん!」

「お前はダメ。帰れ」

「ひどっ!」

笑いながら優希が慎の背中を押す。

「ほら、帰るよ」

「えー! 俺も残りたかったのにー!」

「慎もちゃんと勉強してねー!」

「水乃もなー!」

そんな声と一緒に三人が部屋を出ていって。

少しすると、玄関の扉が閉まる音がした。

「…………」

さっきまであんなに騒がしかった部屋が、一気に静かになる。

「……私も帰りたかったのに」

「終わったら帰ればいいだろ」

「家、隣なのに」

「だから何」

「家でやっても一緒じゃん」

「一緒じゃねぇよ。お前一人だと絶対途中で寝る」

「寝ないってば」

「はいはい」

「信じてない!」

早手は私の文句なんて気にもせず、開きっぱなしだった問題集を私の前へ押し戻した。

「ほら。あとちょっとだろ」

「…………」

仕方なく、もう一度シャーペンを握る。

早手と二人きりになることなんて、今さら珍しくもない。

昔から何度もこうして、この部屋で二人で過ごしてきたから。

「……分かんない」

「早すぎだろ」

「だって分かんないもん」

「まだ問題読んだだけじゃねぇか」

「読んでも分かんなかったの!」

「……貸せ」

呆れたように言いながら、早手が私のノートを自分の方へ引き寄せた。
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