beautiful love ★ 俺様boyと天然girl
「早手、今日もちゃんと補習行ったかなぁ……」
体育館へ向かいながら、ふと呟く。
昨日はあれだけ行きたくないって言ってたし。
今日も私が見てないところで、こっそり部活に来てたりして。
「さすがに行ってるでしょ」
隣を歩いていた優希が呆れたように笑う。
「そうかなぁ」
「水乃、あんた早手のお母さんじゃないんだから」
「だって、昨日も行かないって言ってたんだよ?」
「結局行ったんでしょ?」
「うん」
「じゃあ大丈夫よ」
そう言われても、ちょっと心配。
早手、英語嫌いだし。
先生に怒られて、途中で逃げ出してないかな。
「おーい、水乃ー!」
後ろから聞き慣れた声がして、振り返る。
慎が真澄と一緒にこっちへ走ってきた。
「お前ら遅くね?」
「慎たちが早いんだよー」
「俺は早くバスケしたいからな!」
「はいはい」
優希が軽く流すと、慎が不満そうな顔をする。
「あれ? 早手は?」
「補習」
私が答えると、慎が「あー」と笑った。
「今日もか」
「金曜日まで毎日だよ」
「かわいそー」
「本人のせいでしょ」
優希が言うと、真澄まで頷く。
「課題出してない早手が悪い」
「そうだよね!」
「水乃、嬉しそうに言うなよ」
「だって昨日、私があれだけ言ってやっと行ったんだもん」
「マジで母ちゃんみたいになってんな」
「慎!」
笑いながら逃げる慎を追いかけて、体育館に入った。
早手がいないまま、部活が始まった。
私と優希はいつものようにドリンクを準備したり、ボールを片付けたり、練習の記録をつけたり。
体育館の中には、ボールが床を叩く音と、シューズの音が響いている。
いつもと変わらない光景。
……なんだけど。
「…………」
つい、入口を見てしまう。
まだ来ない。
「水乃」
「ん?」
「さっきから入口見すぎ」
「えっ」
隣で記録をつけていた優希が笑っている。
「べ、別に見てないよ?」
「はいはい」
「ほんとだもん!」
「早手なら補習終わったら来るでしょ」
「だから早手を待ってるわけじゃ――」
ガラッ――。
体育館の扉が開いた。
「あ」
反射的に顔を上げる。
早手だった。
鞄を肩にかけたまま、面倒くさそうな顔で体育館に入ってくる。
「早手!」
気づいたら呼んでいた。
早手がこっちを見る。
「……何」
「ちゃんと補習行ったんだ!」
「お前、俺を何だと思ってんの」
「昨日まで行かないって言ってた人」
「…………」
図星だったらしい。
早手が嫌そうな顔をする。
「途中で逃げなかった?」
「逃げてねぇよ」
「ほんとに?」
「お前マジでうるせぇな」
そう言いながら、早手が私の頭を軽く押す。
「わっ、何するのー!」
「うるせぇから」
「心配してあげてるのに!」
「頼んでねぇ」
「もう!」
早手はそのままコートへ行こうとする。
その背中を見て、ふと思い出した。
「あ、早手!」
「今度は何」
「あと3日だからね!」
「…………」
「明日もちゃんと行くんだよ?」
早手がものすごく嫌そうな顔をした。
「……分かってるって」
「ほんと?」
「しつこい」
そう言いながら。
私の横を通り過ぎる時、早手の手が一瞬だけ私の頭に触れた。
ぽん。
本当に、それだけ。
「…………」
早手は何事もなかったみたいにコートへ向かっていく。
私はその場に残されたまま、自分の頭に触れた。
……なに、今の。
「水乃」
「っ!」
横を見ると、優希がにやにやしながらこっちを見ていた。
「な、なに?」
「別にー?」
「その顔絶対なんかある!」
「何も言ってないでしょ」
「優希ぃ!」
優希は笑いながら仕事に戻ってしまった。
私はもう1度、コートを見る。
早手はもう練習に混ざっていて、真澄と何か話している。
いつも通りの早手。
いつも通りの部活。
それなのに。
頭に残った一瞬の感触だけで、こんなに嬉しくなるなんて。
「……ずるい」
小さく呟いて、私も仕事に戻った。
早手の補習が終わるまで、あと3日。
早く金曜日にならないかな。
その時の私は、そんなことしか考えていなかった。
体育館へ向かいながら、ふと呟く。
昨日はあれだけ行きたくないって言ってたし。
今日も私が見てないところで、こっそり部活に来てたりして。
「さすがに行ってるでしょ」
隣を歩いていた優希が呆れたように笑う。
「そうかなぁ」
「水乃、あんた早手のお母さんじゃないんだから」
「だって、昨日も行かないって言ってたんだよ?」
「結局行ったんでしょ?」
「うん」
「じゃあ大丈夫よ」
そう言われても、ちょっと心配。
早手、英語嫌いだし。
先生に怒られて、途中で逃げ出してないかな。
「おーい、水乃ー!」
後ろから聞き慣れた声がして、振り返る。
慎が真澄と一緒にこっちへ走ってきた。
「お前ら遅くね?」
「慎たちが早いんだよー」
「俺は早くバスケしたいからな!」
「はいはい」
優希が軽く流すと、慎が不満そうな顔をする。
「あれ? 早手は?」
「補習」
私が答えると、慎が「あー」と笑った。
「今日もか」
「金曜日まで毎日だよ」
「かわいそー」
「本人のせいでしょ」
優希が言うと、真澄まで頷く。
「課題出してない早手が悪い」
「そうだよね!」
「水乃、嬉しそうに言うなよ」
「だって昨日、私があれだけ言ってやっと行ったんだもん」
「マジで母ちゃんみたいになってんな」
「慎!」
笑いながら逃げる慎を追いかけて、体育館に入った。
早手がいないまま、部活が始まった。
私と優希はいつものようにドリンクを準備したり、ボールを片付けたり、練習の記録をつけたり。
体育館の中には、ボールが床を叩く音と、シューズの音が響いている。
いつもと変わらない光景。
……なんだけど。
「…………」
つい、入口を見てしまう。
まだ来ない。
「水乃」
「ん?」
「さっきから入口見すぎ」
「えっ」
隣で記録をつけていた優希が笑っている。
「べ、別に見てないよ?」
「はいはい」
「ほんとだもん!」
「早手なら補習終わったら来るでしょ」
「だから早手を待ってるわけじゃ――」
ガラッ――。
体育館の扉が開いた。
「あ」
反射的に顔を上げる。
早手だった。
鞄を肩にかけたまま、面倒くさそうな顔で体育館に入ってくる。
「早手!」
気づいたら呼んでいた。
早手がこっちを見る。
「……何」
「ちゃんと補習行ったんだ!」
「お前、俺を何だと思ってんの」
「昨日まで行かないって言ってた人」
「…………」
図星だったらしい。
早手が嫌そうな顔をする。
「途中で逃げなかった?」
「逃げてねぇよ」
「ほんとに?」
「お前マジでうるせぇな」
そう言いながら、早手が私の頭を軽く押す。
「わっ、何するのー!」
「うるせぇから」
「心配してあげてるのに!」
「頼んでねぇ」
「もう!」
早手はそのままコートへ行こうとする。
その背中を見て、ふと思い出した。
「あ、早手!」
「今度は何」
「あと3日だからね!」
「…………」
「明日もちゃんと行くんだよ?」
早手がものすごく嫌そうな顔をした。
「……分かってるって」
「ほんと?」
「しつこい」
そう言いながら。
私の横を通り過ぎる時、早手の手が一瞬だけ私の頭に触れた。
ぽん。
本当に、それだけ。
「…………」
早手は何事もなかったみたいにコートへ向かっていく。
私はその場に残されたまま、自分の頭に触れた。
……なに、今の。
「水乃」
「っ!」
横を見ると、優希がにやにやしながらこっちを見ていた。
「な、なに?」
「別にー?」
「その顔絶対なんかある!」
「何も言ってないでしょ」
「優希ぃ!」
優希は笑いながら仕事に戻ってしまった。
私はもう1度、コートを見る。
早手はもう練習に混ざっていて、真澄と何か話している。
いつも通りの早手。
いつも通りの部活。
それなのに。
頭に残った一瞬の感触だけで、こんなに嬉しくなるなんて。
「……ずるい」
小さく呟いて、私も仕事に戻った。
早手の補習が終わるまで、あと3日。
早く金曜日にならないかな。
その時の私は、そんなことしか考えていなかった。