beautiful love ★ 俺様boyと天然girl
止まらない思い
「水乃、いるかー?」
慎の声が。
保健室の中に響く。
「……あれ? いねーじゃん?」
「…………っ!」
どうしよう……!
本当に慎だ……!
そう思った、その時。
「誰もいねーじゃんな」
もうひとつ。
聞き慣れた声がした。
え……。
真澄まで!?
「もう、真澄が水乃は保健室にいるって言うから、俺飛んできたのによー!」
慎の声が。
どんどん近づいてくる。
「てか真澄、お前一緒に来なくてもよかったんだぞ?」
「は?」
「お前も水乃、心配だったの?」
トクン……。
慎……。
私のこと心配して、来てくれたんだ。
「帰ったんじゃねーの?」
真澄の声がする。
「てか俺だって、さっき火傷して保健室来たんだけど。そっちは心配してくれる?」
「お前は元気そうじゃん」
「ひでーな」
いつもみたいな。
慎と真澄のやり取り。
だけど。
今の私には笑って聞いていられない。
「水乃、ここにいると思ったんだけどな……」
カタン――。
「…………っ!」
近い。
慎と真澄が、すぐそこにいる……。
このままじゃ。
早手と一緒にいるところを見られる……!
そう思った瞬間。
早手に手を掴まれた。
「え――」
声を出す暇もなく。
そのままカーテンの向こうへ引かれる。
ベッドが小さく軋んで。
私も早手も、咄嗟に身を隠した。
「…………っ」
近い……。
狭いベッドの上。
すぐ目の前に早手がいる。
こんなところ。
慎に見つかったら……。
「水乃、大丈夫かな……」
カーテンの向こうから。
慎の声が聞こえる。
「さっきも様子変だったし……」
「…………」
「なんか、息荒かったんだよ」
トクン……。
「やっぱ、そばにいないと心配になるな……」
慎の声が。
少しだけ不安そうになる。
胸が痛くなった。
慎……。
本当に私のこと心配してくれてるんだ。
何度。
慎の優しさに助けられたんだろう。
それなのに私は。
今、早手と一緒にここに隠れてる。
「……そんな心配なら、連絡すれば?」
「したよ。さっきまで電話してた」
ドクン――。
早手に掴まれている手が。
わずかに強く握られた。
「じゃあ大丈夫なんじゃね?」
「んー……でも、途中で急に切れたんだよな」
「切れた?」
「うん。なんか変だった」
「…………っ」
まずい。
それ以上言わないで……。
「まあ、あとでもう1回連絡するけど」
慎は。
何も知らない。
あの電話を切ったのが。
私じゃなくて早手だったことも。
今、その早手と。
カーテン1枚隔てた場所に隠れてることも。
「……ほんと水乃のこと好きだな、お前」
真澄が。
呆れたみたいに笑う。
「うん」
慎は。
迷いもしなかった。
「好きだよ」
「…………っ」
トクン――。
「だから心配なんだって」
その言葉と同時に。
早手に掴まれていた手が、また少し強く握られた。
「…………」
怖くて。
早手の顔が見られない。
慎……。
私、ここにいるよ……。
そう言えばいいだけなのに。
声が出ない。
早手から離れようと。
掴まれている手をそっと引いてみる。
だけど。
早手は離してくれない。
カーテンの向こうには慎。
すぐそばには早手。
早手が今。
どんな顔をしてるのか。
怖くて。
やっぱり、見られなかった。