beautiful love ★ 俺様boyと天然girl








―――――――――






「俺、水乃に告白した」

カーテンの向こうから。

慎の声が聞こえる。

「本気だから。誰にも渡したくない」

「…………」

保健室に急に慎と真澄が入ってきて。

俺は咄嗟に水乃の手を掴んで、カーテンの向こうのベッドに身を隠した。

すぐ目の前には。

顔を真っ赤にした水乃がいる。

俺と目を合わせようともしない。

掴んだ手を離そうと、何度も小さく動かしてる。

……離せるわけねぇだろ。

さっきまで。

慎のところに行きたいみたいなこと言ってたくせに。

「それ、本気?」

あ。

「水乃、まだ早手のこと好きなんじゃねーの?」

「…………」

水乃の指先が。

ピクッと動いた。

俺も。

息が止まりそうになる。

「分かってるよ」

慎は。

少しも迷わなかった。

「水乃がまだ早手のこと好きなのも、分かってる」

「じゃあ、お前――」

「でも、もう別れてるだろ」

ドクン――。

分かってる。

そんなこと。

俺だって。

さっき水乃に言ったばっかだ。

別れたことは分かってる。

それでも諦められないって。

「だからって、水乃がすぐ俺のこと好きになるなんて思ってねーよ」

慎の声が。

カーテン1枚向こうから聞こえてくる。

「ただ、俺にも可能性はあると思ってる」

「…………」

なんだよ。

それ。

「前はさ、無理だと思ってたんだよ」

「何が?」

「早手には敵わないって」

「…………」

「10年くらいずっと一緒にいて、付き合う前からあの2人だけ特別だったし」

慎が。

淡々と話してる。

「だから俺も、ずっと我慢してた」

「…………」

「でも今は違う」

ドクン――。

「最近、水乃が俺のこと頼ってくれるようになった」

目の前の水乃が。

また俺から目を逸らした。

……やめろ。

そんな顔すんな。

「一緒に学校行ったり、帰ったり。今日だって一緒に文化祭回ったし」

分かってる。

全部見てた。

見たくなくても。

ずっと目に入ってた。

「俺といる時、ちゃんと笑ってくれるようになった」

「…………」

胸の奥が。

ぐちゃぐちゃになっていく。

「だから今なら……俺が水乃のそばにいてもいいのかなって思ってる」

慎。

それ以上。

言うな。

「守りたいんだよ」

ドクン――。

「水乃が辛い時、一番に支えてやりたい」

「…………」

掴んでる水乃の手が。

震えてる。

いや。

違う。

震えてんのは。

俺の方だ。

「水乃が好きなんだ」

胸が。

痛い。

今まで感じたことないくらい。

息が詰まりそうになる。

ずっと。

俺の隣にいたやつ。

俺が守るって。

ガキの頃からずっと思ってたやつ。

そいつを。

慎が本気で連れていこうとしてる。

「俺は水乃の笑顔、守りたいんだ」

「…………」

誰が。

お前なんかに渡すかよ。

今すぐ。

ここから連れていきたい。

慎の声なんか。

聞こえないところまで。

俺のそばに。

ずっと置いておきたい。

「水乃、最近さ」

まだ。

慎の声が続く。

「ほんと俺に頼ってくれるようになったんだよ」

「…………」

「ちょっとの進歩だけど、それだけでも嬉しいし」

慎が。

少し笑ったのが分かった。

「余計、離したくなくなった」

「…………っ」

目の前の水乃の目から。

涙が落ちた。

なんで。

泣くんだよ。

慎の話聞いて。

なんでお前が泣くんだよ。

「すぐ俺のこと好きになってくれなくてもいい」

「…………」

「でも、俺はもう誰にも渡す気ないけどね」

ドクン――。

その瞬間。

俺の中で、何かが切れた。

……お前がその気なら。

もう。

俺だって我慢しねぇ。

グイッ――。

「……っ!?」

掴んでいた手を引く。

水乃の身体が、俺の方へ近づいた。

驚いた顔。

濡れた目。

近い距離で。

水乃が俺を見る。

「…………」

今すぐ。

こいつを俺の方だけ向かせたい。

慎のことなんか。

考えられなくなるくらい。

そんな衝動のまま。

水乃との距離を詰める。

「……早手……?」

その声で。

ギリギリのところで止まった。

水乃の頬には。

まだ涙が残ってる。

「…………っ」

違う。

こんなんじゃねぇ。

無理やりこいつを俺の方に向かせたいんじゃない。

俺が欲しいのは。

水乃が自分から、もう一回俺を選ぶことだ。

「……クソ」

小さく吐き出して。

額を水乃の肩に押しつける。

「……マジで、無理」

慎の声を聞いてるだけで。

頭がおかしくなりそうになる。

それでも。

水乃が嫌がることだけはしたくない。

だから。

震える手で、水乃の手だけを握った。

「……絶対、渡さねぇから」

慎にも。

誰にも。

もう。

黙って見てるだけなんてやめる。
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