人生の楽しい終わらせ方
呆れ顔でカナタが言うと、サエキは疲れて動かせないはずだった腕でマットレスを剥がして、ベッドの横に立てた。
秘密基地化計画に進展があったおかげで、やる気が出てきたのだろうか。
剥がしたマットレスは、隣の部屋にでも移動させておけばいいだろう。
すっかりごみ置き場と化しているが、誰も入らないのだし、別に構うことはない。
きっと次にカナタとサエキ以外の誰かがここまで入るときは、この建物が取り壊される時だ。
あとから気付いたのだが、入り口のドアにはそもそも鍵がついていなかったのだ。
きっと、自分たち以外にも誰か入ったことがあるだろうし、入ってくるだろう。
だから応急処置的ではあるが、カウンターから見つけ出した鍵は、三階のもの以外は全て海に投げ捨ててしまった。
どの部屋も鍵がかかっていて、そしてルームキーが一階に見当たらなければ、ホテル中を見て回ろうなんて気は失せてくれるだろう。
最上階のこの部屋には、出入りの時以外は常に鍵をかけておくことにして、ルームキーはサエキの財布の中に収まった。
マットレスのなくなったベッドに腰かけて、サエキが体を揺らす。
耳障りな音が鳴った。
カナタはかび臭いマットレスを隣の部屋に投げ込んでくると、またホウキを手に取った。