人生の楽しい終わらせ方
「いいよ、俺」
「え?」
「サエキさんが死ぬとこ、見てる」
「……カナタが死ぬ時は? 誰が見てるの」
「誰もいないよ」
「いないの?」
「俺のこと、誰も知らない場所で、死にたい」
「淋しい人だね」
「そう。淋しい人なの、俺」
サエキが、やっとこっちを見ている気がした。
けれどカナタは隣を向くことなく、ただ窓の外を眺めていた。
真っ黒の海ではなく、月明かりでほんのり明るくなった空でもない。
漁火の灯りでぼやあ、と浮かんで見える、水平線を眺めていたのだ。
サエキの視線を感じながら、カナタは口を開いた。
「ねぇ。サエキさん、知ってる?」
「クリオネって」
「死んだら溶けてなくなるんだよ」