先天性マイノリティ



俺は自分に対して病的なほどに自信がない。

劣等感の塊で、生まれて来た理由がない廃棄物のような人間だと思って来た。

俺を婆ちゃんに預けてどこかに消えた両親は、田舎町で共に自殺をしたのだという。

…俺の大切な人は皆、自ら命を絶ってしまう。



意気地無しで取り柄もない、ごく普通の、標準以下の俺。

だけどそれでも、コウはいいと言ってくれた。

メイはいつも、励ましてくれる。



──『ゼロジの格好いいとこも悪いとこも、知ってるのは私とコウだけだからね。忘れんなよ』



脳裏に蘇る声。

三人でワンセット。


コウがいなくなった今も、これから先も、ずっと変わらない。

絆だとか運命だとか、形に喩えたら陳腐なものを、俺は馬鹿げるくらい真剣に信じている。


…「なんとなく」は今、確信に変わった。

顔を上げて口を開く。


俺を生かしてくれた二人に、俺はひとりの人間として感謝をしている。

恋愛感情、友情を考えるのは二の次でいい。

強くそう思う。




「…コウが誰を好きだったとしてもいい。それから、俺はコウと同じくらいメイも大切なんです。俺は、二人がいたから今まで生きて来られた。俺は恨まれてもいい、だけどメイは恨まないでください」



言い終わる寸前に、右頬を殴られた。

衝撃で路上に倒れ、覆い被さってきたナツメにもう一発殴打される。

周囲から悲鳴が上がった。


続いて、三発。


口の端が少し切れる。





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