先天性マイノリティ



「なあ、爺さんになっても続ける?」



なにを、と訊き返さなくてもニュアンスでわかる。

俺は生物学上男でありコウも男だった。

そんなことはどうでもいいカテゴリに入っていて日頃はすっかり忘れているが、ふとしたときに思い出すことがある。

喩えば著名人の結婚のニュースなどを目にした際に、ああそういえば、と話題に上る程度には。



「まず子供が出来ないからな。非生産的だ」


「試験管で作ればいい。コウならやりそうだけど」


「おい。カップメン作るみたいに言うなよ」



引き続き、お前が小麦粉を捏ねて卵でもおとせば命くらい簡単に出来そうなものだとジョークを飛ばすと、コウは苦笑をして頬杖をつき黙り込む。


…この関係が不毛だなんてわかっている。

互いに、痛いほどに。



どうしてこの地球には二種類の性別しか存在しないのか。

何故男と女でなければ生命は誕生しないのか?

当然の仕組みを至極理不尽だと思ってしまう。

生まれてくる性別も姿も受動態であり抵抗をする術もない。


シンプルな要求に従った結果が恋人になるという選択だった。

街を行き交う男女と全く同じ類の感情。

否、男女間よりもずっとプラトニックな面が強い愛情だと言い切れる。

DNAも本能も投げ棄てて選んだ、笑っちまうくらいに真摯な愛。

泥沼で心中をするほどの激情もなく、著名な絵画のような気高さもない。



…ただ、好きだった。



本当にただ、それだけだった。



< 6 / 95 >

この作品をシェア

pagetop