先天性マイノリティ
コウは黒を好んだ。
常に身辺が黒いもので統一されていた。
幽霊の影のように脇部分がひらひらとしている変な形のTシャツ、擦り切れ加工のブラックデニム、気に入っていると言っていたボールペンや財布、携帯、生まれてから一度もブリーチをしたことがないという髪色も、全てが黒。
…葬式の際の黒渕写真までが似合っていたことは、なによりの皮肉だったけれど。
しんと静まり返ったこの室内の温度は以前よりも下がった気がする。
気温や気候に拘わらず、寒い。
気づけば二週間あまりを脱け殻のように生きている。
──いつまであの時間を、共に過ごした季節を覚えていられるのだろう?
ふいに考えて恐ろしくなった。
虚構な現実は、生身の俺をなぶるように苦しめる。