先天性マイノリティ
亡き大作家の芥川龍之介の遺書の内容のように、「将来に対する唯ぼんやりした不安」を抱える人間も少なくはないはずだ。
最終的に、爪の上の砂ほどの決意の違いだけで生きるか死ぬかが定まる場面も多々ある。
命だけではない、感情だって死ぬことがある。
物だって思い出だって、絶命することがある。
時間だって、そうだ。
(…このつまらない世界は、あなたがいなくなって更に褪せてしまいました、ウエダさん)
俺が視た夢は、満更捏造ではないと思う。
今度、キサラギさんに内容を話してみようか。
…そう思ったのは、確かについこの前のことだったはずだ。
状況というものは、残酷に転調する。
こうなって来ると、時間は魔物だ。
陥落へと仕向ける使者だ。
ぷっつりと切れたピアノ線のように、兎に角なにも考えられなかった。
簡潔に述べることにする。
──サクラくんは、とうとうくるってしまったのだ。
キサラギさんと俺は、サクラくんとは別の病院へ運ばれて処置を受けた。
頭の中は、心的内傷を緩和させようと躍起になってフィルターをかけている。
自己防衛本能とはこういうものなのか、と初めて知った。
サクラくんに切りつけられた腕の傷は、思ったよりも深かったようだ。
それでも、彼を憎む気持ちは微塵も沸いて来ない。
今の心境を喩えるとすれば、全く別の──。
集中治療室、白い天井、寝かされたベッドの上。
隣から届いたか細い声。