先天性マイノリティ





──夢から醒めた。

締めつけられるような痛みと、ちょっとした楽しさを孕んだ朝。

清々しい光は、微量の郷愁を感しているように映る。

俺の心情のままに、少しだけ寂しい。



「…俺に言われても、ねぇ」



本人に伝えないまま死んでしまうなんて、ウエダさんは結構なサディストだな。

俯いて、笑う。


夢の世界のように、金銭の概念もなく、世間への強制的協調、時間や寿命の束縛もなく生きていけたならどんなにいいだろう。

生きているうちは、誰もが生の呪縛から逃れられない。

毎日の生活というものは、明らかに楽しいことのほうが少ない。

苦痛の連続だ。

仕事に悩み恋愛に悩み病に悩み、終いには自身の存在価値に悩み、無意識のうちに生死の選択をしながら生きているような、そんな救いのない現代。


「あなたは何故生まれて来たのですか?」なんて厨二病かぶれの台詞を問われたなら、殆どの人が鼻で笑って、「生まれて来たことに意味をこじつけようとするやつは馬鹿だ」と、スイーツな苦言を投げ反すだけだろう。

社会が混濁すると自殺者が増えるのも当然の道理。

でも、電車のホームに飛び込んだって、樹海で首を吊ったって、年間自殺者グラフの数万人の内訳の一人にカウントされるだけのことだ(下手したら神隠し扱いで終わる)。

かと言って、このまま歳を重ねて老衰で死んでも大した差はない。

精々国民の寿命調査に利用されるだけでお終いなのだ。





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