先天性マイノリティ



おばさんから譲り請けたコウの遺品の一部から「人間失格」の文庫本を取り出して目を通すと、忽ち憂鬱に襲われる。

何度読んでも私には刺激が強く、感化され過ぎる内容。


「Re:tire」のCDのパッケージの黒枠のデザインも葬儀を意図しているようで、不吉だ。

コウは不吉なものを敢えて好む傾向にあった。


…段ボールの中から転がり出た金色のボタン。


高校時代の制服のものだと気づいて、涙が出た。




「私に、託さないでよ。どうして全部、私に預けるの」




コウは卑怯者だ。

一切を私に押しつけて、眠ってしまったのだからヴァンパイアよりも質が悪い。



──骨になっちゃったから、あんたはもう、ゾンビにすらなれないんだね。



口に出して言ってみたら剰りにもシュールで、哀しくて悔しくて、私は部屋の角に丸まって泣いた。

太陽を二度と視たくないと思うほどに、絶望と同化した。





…さよならなんて、言ってやらない。





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