金魚すくい
「あの時俺は柚子が死んだんじゃないかって思った……。父さんみたいに俺を置いていってしまったんじゃないかって……
どうしてこうなる前に何も言ってくれなかったんだ、どうしてもっと早くに気づいてあげられなかったんだって……後悔したんだ」
助けに入ってくれた時、優の目の前にはきっと殴られている私が、自殺した優のお父さんと重なっていたんだ……。
優も恐怖と不安を抱えてる。
この10年間、それを抱えて生きてきたんだ。
「……私はどこにも行かないよ」
背が高くなった優に必死になって背伸びして、優の頭を撫でた。
サラサラとした黒い髪が私の指の間で踊る。
「……柚子」
優は頭を上げ、私を正面から見つめる。
目と鼻の先、鼻の頭がぶつかりそうなほどすぐそばで。
……吸い込まれそうだ。
優に見惚れて、頬が高揚するのを感じ、目を逸らそうとしたその時ーー。