金魚すくい
この状況を予測していたのだろう。
優はあっさり承諾し、女子達にごめんねと一言添えて雄馬の後をついて行った。
先陣切って教室を出ていこうとしていた雄馬が突然入り口の所で振り向き、
「なに呆けてんだよ。柚子、お前も早く来い」
当たり前の様にそう言った。
優がいなくなってからまともに会話する事が無くなっていた私達。
付き合ってからもそれは変わらなかったのに、そんな様子は微塵も感じない言葉に胸が締め付けられる。
だけどそんなものを噛み締めてる暇は無い。
入り口に立つ雄馬の眉間にシワの数は増えていく一方だし、何より女子の視線が一気に私へ降り注ぎ、それが一番居心地が悪い。
その視線は好奇なものから冷たいものまで様々で……。
ーー針のムシロ。
そんな視線から逃れるように入り口で待つ2人に向って駆け出した。