*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
高貴な女性は幼い頃から髪を切らずに伸ばし続ける、という古くからの慣習に、六の君は則ってはいない。
そのため、その髪は、高貴の人々が思わず眉を顰めるような短さである。
だが、生まれながらに髪の豊かさに恵まれていた。
椿油さえ塗っていないというのに黒く濡羽色に艶めく髪が、色鮮やかな袿の肩を滑り背に流れ、腰のあたりをとうとうと揺蕩っている。
その雅やかな様子は、何とも言いようがないほどた。
しかし、何よりも人の心を惹きつけてやまないのは。
ーーーその、双眸であった。
六の君の瞳は、神妙なことに、世にも珍しい薄花色(ごく薄い藍色)をしていた。
髪色はむしろ人よりも黒が深いほどだったが、なぜか瞳の色だけがひどく薄いのだ。
特に光が当たると、その色はさらに薄く、青味が際立った。
そのため、その髪は、高貴の人々が思わず眉を顰めるような短さである。
だが、生まれながらに髪の豊かさに恵まれていた。
椿油さえ塗っていないというのに黒く濡羽色に艶めく髪が、色鮮やかな袿の肩を滑り背に流れ、腰のあたりをとうとうと揺蕩っている。
その雅やかな様子は、何とも言いようがないほどた。
しかし、何よりも人の心を惹きつけてやまないのは。
ーーーその、双眸であった。
六の君の瞳は、神妙なことに、世にも珍しい薄花色(ごく薄い藍色)をしていた。
髪色はむしろ人よりも黒が深いほどだったが、なぜか瞳の色だけがひどく薄いのだ。
特に光が当たると、その色はさらに薄く、青味が際立った。