*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
露草は、六の君のこの不思議な瞳にたいそう心酔していた。



しかし、それに反して、珍奇な色の瞳を快く思わない者は数知れず、この邸の中でも「異形の姫君」と悪しざまに噂されることが度々であった。




それでも、と露草は思う。



たとえ青い瞳をしていたとしても、特殊な出生であったとしても………六の君が世に比類なく美しい、気高く優美であでやかな姫であることは、誰の目にも明らかだった。




だからこそ、この身も心も美しい主君を何としてもお守りしよう、と露草は強く心に誓っているのだ。





そんなことを思いながら、露草は六の君の視線を追い、空へと目を向けた。




月は、ほんのりと青みの残る東の夜空に、ぽかりと浮かんでいる。



西の空はまだ仄かに赤く、昼の明るさを残していた。




夜はまだ浅い。






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