*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「おい、四つ子」




固まって話している藤波たちに、墨染の直垂(ひたたれ)に括袴(くくりばかま)を履いた一人の男が声をかけてきた。




「あっ、黒松!」




糸萩が声を上げる。




黒松と呼ばれた男は、表情も変えずに近づいてきた。





「お前たち、ご苦労だったな。


よく灯を連れ戻してくれた」





「たいしたことないよ。


ちょっと調べて、お邸にお邪魔しただけさ」





藤波は事も無げな表情でそう応えた。




黒松は微かに頬を緩めてから、四つ子たちを見回す。




「お頭が、お前たちの労をねぎらいたいと呼んでいる。


灯を連れて、会いに行ってこい」





「はーい」





糸萩と楪葉が声を揃えて元気良く答えた。




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