*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「はい、青丹丸。あーん」





汀がにこにこしながら、匙に載せた羹を差し出すと、青丹丸は尻尾をぶんぶん振って勢いよく食べた。





「まっ、なんて素直なの!

可愛いわ青丹丸!!」




汀は青丹丸の頭をくしゃくしゃと撫でる。




食事を終えると、今度は青丹丸を抱いて、庭へ。




汀は足元に落ちていた小枝を拾い、青丹丸を地に降ろす。





「さぁっ、青丹丸!!


投げるわよ、取ってきてね!」




「きゃん!!」





汀が枝を放った途端に青丹丸は走り出し、ぴょんと飛び上がった。




しかし飛ぶのが一瞬おそく、空中で取ることはできない。





青丹丸は着地してからきょろきょろと周りを見回し、枝を見つけると、ぱくっと咥えて汀のもとに一直線に駆けもどってきた。




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