*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
大きく息を吸い込んだ汀のもとに、青丹丸が近寄ってきた。





くぅん、と鼻を鳴らしながら、夜着の中に潜り込んでくる。





その温もりに、汀はくすりと笑った。






「………ありがとう、青丹丸。



心配してくれているのね?」






青丹丸は再び、くぅんと鳴いた。






そこに、そろそろと妻戸を開け、露草が入って来た。







「………姫さま。


お加減は如何でございますか。



薬湯を持ってまいりましたが、お飲みになられますか」







汀は夜着の中から顔を出し、露草に力なく笑いかける。






「ありがとう、露草。


大丈夫よ、迷惑をかけてごめんね」






「迷惑だなんて、滅相もございません」






露草はほっとしたように笑い返した。







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