*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
身を起こした汀に、露草が薬湯の入った漆器を手渡す。




黙ってそれを少しずつ口に含んでいく汀を、露草は静かに見つめていた。





「………ふふ。


そんなに見られたら、なんだかくすぐったいわ、露草」





「………あ。すみません………」




「あら、謝ることなんてないわ」






そう言って、汀は再び黙り込んだ。






「…………あの、姫さま」




「なぁに?」




「この度は、大変おめでとうございます」





改まった口調で、床に指をついて頭を下げた露草を、汀は目を丸くして見つめる。




そして、にっこりと微笑んだ。





「………ありがとう、露草。



ーーーそうよね、おめでたいことなんだわ………」






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