*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
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戌一つの刻を知らせる鐘の音が、ひと気のない華月京に響き渡った。
灯たちは、町外れの静かな通りから京に入り、倉田小路の中ほどにいったん待機している。
灯が建物の陰から五条大路の方角を窺う後ろで、群雲たちは息を潜めていた。
黒松は一人先回りして、左近の大将の邸の方へ行っている。
卯花と糸萩、楪葉は、緊張の面持ちで押し黙っていた。
いつもは皮肉っぽくひねくれた態度をとっている藤波も、今日ばかりは大人しく顔を強張らせているようだ。