*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「東二条の右大臣さまの姫君………、六の君さまのお話ですわ!」
その名を耳にした瞬間、灯は思わず足を止めてしまった。
先頭を駆けていた灯が突然とまったので、すぐ後ろにいた四つ子たちは目を丸くして急停止した。
「………なっ、どうしたのよ、灯」
卯花が小声で灯に耳打ちするが、灯はそれにさえ気づかないように、じっと身動ぎもせずに佇んでいる。
その目線は北の対の方へと向けられていた。
「どうした灯。何か聞こえるのか」
群雲が足音を潜めて近づいてきて訊ねたが、灯は「いや」と小さく否定しただけだった。
しかし、動き出す気配はなく、ただ黙って北の対の様子を窺っている。
もちろん女たちの会話など聞こえるわけのない仲間たちは、怪訝そうな表情で灯を見つめるしかなかった。
その名を耳にした瞬間、灯は思わず足を止めてしまった。
先頭を駆けていた灯が突然とまったので、すぐ後ろにいた四つ子たちは目を丸くして急停止した。
「………なっ、どうしたのよ、灯」
卯花が小声で灯に耳打ちするが、灯はそれにさえ気づかないように、じっと身動ぎもせずに佇んでいる。
その目線は北の対の方へと向けられていた。
「どうした灯。何か聞こえるのか」
群雲が足音を潜めて近づいてきて訊ねたが、灯は「いや」と小さく否定しただけだった。
しかし、動き出す気配はなく、ただ黙って北の対の様子を窺っている。
もちろん女たちの会話など聞こえるわけのない仲間たちは、怪訝そうな表情で灯を見つめるしかなかった。