*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「右大臣さまの六の君さま………って、あら、御娘君は六人もいらっしゃったかしら」




「わたくしも、御娘は五人だと伺っておりましたけど」




「いえ、それがね………ずっと北の対にお隠しになっておられる姫君が見えるんですって」




「まぁ、なぜお隠しになっておられるのかしら」




「いろいろお噂はありますけれど、あまりにもお美しい姫君なので、下賤の男たちの目に触れぬようにしておられたのだとか………」




「あら、わたくしは、なんでも常人とは異なる奇怪な容姿をお持ちだとかいう、不気味なお噂を聞いたことがありますけれど」




「まぁ、どちらがまことなのでしょう」




「どちらでもけっこうですわ、それで、先ほどあなたが仰っていた、その六の君さまのお話って?」




「あぁ、そうそう………」





初めに六の君の話を持ち出した女が、得意そうな声音で話し始めたので、灯はいっそう身を硬くした。







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