*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
御簾の向こうの望月に目を凝らそうとした、その瞬間。









(ーーーーーえ?)








汀の薄藍の瞳が、大きく見開かれた。








望月を背にして立つ男の人影に、気づいたのだ。








(だれ………?)






人影は、中の様子を窺っているのか、動かない。




逆光になっているため、その顔立ちなどはもちろん分からなかった。







(ーーーーーもしかして。



蘇芳丸ーーーーー?)









汀は御簾に駆け寄り、隙間に手を差し込んで外を覗き見た。








「ーーーあっ!!」








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