*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
そんなことをつらつらと考えながら、汀は脇息にもたれて転寝を始めた。







なにか物音が聞こえたような気がして、不意に目を覚ますと、すでに母屋は夜闇に包まれていた。





(………あら、寝ちゃったのね)





汀は目を擦りながら、身体を起こした。




肩には夜着がかけられていた。



燈台の灯火は消されていた。





(露草が気を遣ってくれたのね)





そう考えて、汀はくすりと微笑んだ。





廂の方を見てみると、格子はまだ上げられたままであった。






(私が望月を見ると思って、上げておいてくれたのね)






汀はゆっくりと立ち上がり、月の見える場所まで移動しようとした。









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