*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「それなのに、近頃の灯は、違うのよ。


完全に気が抜けてしまっていて、いつもはあれほど鋭い感覚が、まったく鈍ってるみたいなの」






「ふぅん?」







「今朝なんてね。


近くに猪が来てるのに、全然、気づいてなくて。


突進してくる足音に気づいた青竹が、慌てて灯を繁みの中に突き飛ばしたのよ。



近くに青竹がいなかったら、一体どうなっていたことか…………」






「………たしかに、それはおかしいな。


あいつの耳と鼻で、猪に気づかなかったとは。



そんなこと、これまで一度もなかったなぁ………」






「…………ほんと、どうしちゃったのかしら………」






群雲と檀弓は、心配そうに見つめ合った。









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