*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語







「あっ、藤波!!


こんなとこにいたの!?」




後ろから呼びかけられ、藤波は振り返った。





声をかけてきたのは楪葉だった。




村の近くの空き地で薬草を摘んでいたところへ、藤波が近づいてきたのを見つけたのである。






「藤波ったら、朝から姿が見えなかったから………卯花も糸萩も心配してたよ!


なんであたしたちに黙って出かけちゃうの?」





「………別にいいだろ。


お前たちが勝手に心配しただけじゃないか、俺は心配してくれなんて頼んでない」






不機嫌そうな藤波の言葉に、楪葉は目をぱちくりと瞬かせ、次に傷ついたような表情になった。






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