*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
六の君は壁ぎわに置いてある唐櫃(からびつ)の蓋を開け、その中から取り出した干菓子を童たちの手に持たせた。







「あなたたち、手伝ってくれてありがとうね。


それ、食べてちょうだい。



………あ、この赤髪の男の人のことは、もちろん内緒よ?」








童二人はこくこくと頷き、嬉しそうに干菓子を懐紙で包みながら、立ち去った。




六の君の軽やかであざやかな手口に、露草は感嘆した。



深窓の令嬢らしからぬ満面の笑みで小舎人童の心をしっかりとつかみ、菓子を持たせて、強制的ではない口止めまで済ませてしまったのだ。








(やはりこの御方は、たいそう聡明でいらっしゃる………。


それを、普段はなるべく控えめに慎みなさって、煥発な才気を隠しておいでなのだわ)







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