*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
薄暗い松原、頭上の枝葉の間から、月の光が幾筋も伸びている。





柔らかい風が、梢を揺らす。





青藍色の闇に沈む景色の中で、風に煽られた灯の髪だけが、月明かりを受けて赤く燃えるように煌めいた。







男たちと灯は、時が止まったように牽制しあっていた。







(………さっきのように、不意打ちというわけにはいかないな。



さて、どうしようか………)







灯が心のウチで考えを巡らせていた、その時。







(…………な……っ)







松原の奥をちらりと見た琥珀色の瞳が、大きく見開かれた。







驚いたことに、薄暗い闇の中から、華やかな衣装を纏った汀が走り出てきたのだ。







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