イケメンの顔面踏んづけた結果。
「来週の日曜なんだけどさー」
昼休み。購買で新発売のチーズカレーパンを食べながら、杉本葵が能天気な声で喋る。
「たまには皆で遊ばない?考えてみれば一回も遊んだことないしさー♪」
「それってこのメンバーで!?」
瞳を輝かせて聞くきみちんに、もちろん♪と頷く杉本葵。
「遊ぶ遊ぶー!綾世も空いてるでしょ?来週の日曜日!」
「え?うんまぁ…空いてるけど」
あまりの勢いに引き気味でそう答えると、「慧様も空いてますよね!?」ときみちんは質問のターゲットをあたしから新藤慧にうつした。
新藤慧はちょっと気まずそうに顔を歪めて
「…無理」
「えぇ!?何でですか!?」
「…その日見合いだから」
「あぁ…そっかぁ」
ガックリ肩をおとして、大袈裟に落胆するきみちん。
…ふーん。お見合い…結局するんだ。
……あんなにしないって言ってたくせに。
「…しないんじゃなかったの?お見合い」
気付いたら、そう聞いていた。
新藤慧はチラッとあたしを見て
「…うっせーな。こっちには庶民には分からねー事情があんだよ」
…なにそれ。庶民にわかんねー事情って…
「悪かったね庶民で」
…昨日もそのご令嬢さんと会ってたみたいだし。
案外もう、お見合い前から結構いい雰囲気なんじゃないの?
「…は?お前なにキレてんの?」
「…別にキレてないよ」
自分でも分かるくらい、すっごい刺々しい声。
「キレてんじゃん」
「キレてないって!!!」
気付いたら大声を出して椅子から立ち上がっていた。
教室中の視線が一気に集まったのが分かる。
…何してんだろあたし。
なんか今日、変だ。
「…とにかく…キレてないから!全然!!」
それだけ言って逃げるように教室を出た。
…だめだ。
最近前にも増してアイツに、イライラしてばっかり。
…しかも原因不明。