イケメンの顔面踏んづけた結果。
「あー疲れた。おい奴隷、ジュース」
…撮影中“だけ”はね!!
「ないよそんなの」
「は?気つかえねーブスだな」
撮影が終わり、ただの毒舌男に戻った新藤慧。
「っていうかね!あたしは今日は真っ直ぐ帰ってドラマを見る予定だったんですけど!?」
「お前の予定とか、興味ねー」
ハッと苦々しくそう言って、自分の荷物の中からコーラを取り出す新藤慧。
飲み物持ってんじゃねーか!!
「あんた、言っとくけど自分を中心に世界が回ってると思ったら大間違いなんだからね!!」
「その通りだ、お友達チャン」
突然割り込んできたよく通るテノールボイスに、振り向けば――萩野さん。
「今日もよかったぞ、ケイ」
そしてポンポン、と新藤慧の肩を叩く。
「ありがとうございます」
萩野さんの前では突然借りてきた猫みたいになる新藤慧。
その大人しさをちょっとはあたしの前でも出せや。
「お友達チャンも…ありがとね」
そして新藤慧からあたしに視線を移すと、同じように肩をポンポンと叩いた。
「いえ…あたしは別に、何も」
ただ見てただけだし。
「…いーや?」
しかしニヤッと、萩野さんはなぜか意味深な笑みを浮かべて。
もう一度あたしの肩を叩くと
「まーよろしく頼むよ」
それだけ言って、また仕事に戻って行ってしまった。
…うーん、頼むって言われても…
「…新藤慧のお守り?」
「誰がお守りだ」