イケメンの顔面踏んづけた結果。
そこには机に足を乗っけて座っている、物凄く不機嫌そうな新藤慧と
それを遠巻きに眺める女子達。
一人の女子が意を決したように新藤慧の元へ駆け寄ると
「慧様!あのチョコッ…」
「いらねー、近づくんじゃねーよブス」
乱暴に投げつけられたそんな言葉に、泣きそうな顔をしてその場から走り去っていく女子。
…あの男。
「ちょっと」
「…あ?」
あたしは女子をかき分け新藤慧に近づいた。
「ちょっと今の言葉酷いんじゃない?」
「は?うるせーな、俺はこのくだらねぇ行事が大っ嫌いなんだよ、鬱陶しい」
そして面倒くさそうにあたしから目を逸らす。
「つーか何だよ、お前も俺にチョコ渡しにきたのかよ?言っとくけどいらねーから。帰れブス」
…はぁあ?
この性悪イケメンの意味不明な上から目線に…
あたしの頭のどっかが
プッチーン
と切れた。
「…言っとくけど全ての女子がお前にチョコあげると思ったら大間違いなんだよ!!」
「…あ?」
眉間に皺を寄せ、再びあたしを見上げる新藤慧。
「あんたがいらねーのその一言で断ってるチョコにはねぇ、その子の愛と時間と金が詰まってんだよそれを思い知れバーカ!!!」
「バ…バカ?」
顔を歪める新藤慧の机に、あたしはたまたまポケットに入っていたチ〇ルチョコをバンッ!と叩きつけた。
ポケットに入れていたせいで、体温で若干溶けてたけど気にしない。
「…あ?何だコレ」
異様な目でそれを見つめる新藤慧に
「チ〇ルチョコだよ!20円!!!」
「に、20円…?」
「お前にはそれで十分だブァアアアーカ!!!」
そしてフンッと最後に思いきり睨み付けて、教室を出た。
あたしの高2のバレンタインは
そんな悲惨な形で
幕を閉じた。