華の欠片
襖からていると、男達は一斉に刀を抜い

た。

もちろん父も刀を抜いたが、となりに居

る母は刀など持って居ない。

そもそも母は嫁いだ身なので剣を使う事

すらできないのだ。





いくら父が強いからといって丸星の母を

守りながら数名の大男を相手にするのは

無理がある。



父はとても強い。

こんな奴らに負けるはずがない…




だから…まだまだ弱い私が行ってもかえ

って邪魔になってしまう。

そう、父は強い。大丈夫。

そう自分に言い聞かせた。



しかし、私の考えは直ぐに打ち砕かれて

しまった。


母を斬りつけようとした奴から父はその

身を転じて庇ったのだ。

部屋に父の血が流れた。

大好きだった父の…





その後の私の記憶は定かではない。

多分私は茶室にあった刀を抱えて必死に

逃げたのだと思う。


だが、血を流して倒れている両親の傍

で不気味な笑いを零す長州の紋を付けた

男達の表情、そしてこの憎しみは死んで

も忘れない。




その紋が長州のものだと知ったのは暫く

後の事だが…


あの時、私が刀を抜いて応戦していれば

何かが変わったのだろうか…

大好きだった父と母が死ぬことは無かっ

たのだろうか…


その後、父の知り合いに引き取られた私

はこの愛刀をくれた恩師に出会ったのだ。




まぁ、この話はおいおい話すとしよう。





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