華の欠片

不意に斎藤は私の左手を掴むと近くの隊

士に何かを告げ歩きだした。


「屯所までそう遠くない。帰ったら直ぐ

看てやるからな。」



「斎藤…。迷惑掛けてすまん。」


私は謝らずにはいられず、足を止めて頭

を下げた。



「顔を上げろ。今日一番の功労者はお前

だ。

お前が居なかったらこちらの損害も多か

っただろう。

まだ右目も完治してなくて痛いだろ?

今朝から顔色が良く無い。

早く帰って休め。」



そういうと斎藤は軽く私の頭な手を置い

て撫でるとまた、私の手を引いて歩きだ

す。


斎藤の口調は無愛想ではあったが、とて

も優しく私の心臓は壊れそうなくらいに

脈打っていた。



この胸が締め付けられるような苦しさは

一体何だろう。


今までにこんな事はなかった。


私は一体どうしてしまったのだろうか。


浪士組に入ってからというもの、私はど

うかしてしまったのかもしれない。


前の私だったら、決してここまで人を容

易く信じてなかった。



今も完全に彼らを信じた訳ではないが。


もし、彼らの全てを信じてしまったら....

.私は彼らを頼ってしまうかもしてない...,...


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