華の欠片


屯所について斎藤は直ぐ手当てをしてく

れた。

右目を塞ぐ包帯に右腕に巻かれた包帯。

それが痛々しさを物語っていた。


「椿、痛くないか?

一応土方さんに薬を貰ってきた。

この薬は土方さんの実家で作っているも

のだ。

気休め程度にしかならんが飲め。」


「右目は今朝ほど痛くはない。

迷惑をかけて本当にすまなかった。

薬ありがとう。」



土方の実家で作っているのか....

本当に効くのか...??


斎藤に渡された薬と水を口に含むと今ま

で味わった事のないほどの苦味が口の中

を襲った。


「ぐっ.......」


口に手を当てて吐きそうになるのを必死

に堪えて飲み込んだ。


「椿、大丈夫か?

よく飲めたな....

俺は....飲めなかった。」


「え...?」


「いや...本当飲めなかったんだ。

あまりの苦味でな、吐きそうになって飲

み込めなかった。

ここの隊士でもこの薬を飲めた奴はほと

んど居ない」


「そう...か...。

確かにこの世のものとは思えないほど苦

い。」



「嗚呼、石田散薬というらしい。

これが嫌なら、もう怪我などしない事だ

な。もう飲みたくないだろ?」



「もちろん。もう絶対飲むきはない。

いや、絶対飲まない。」


真面目に。本当。まじで。

私は心に誓った

もう、怪我はしないと。

そして、もう石田散薬は飲まないと。
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