華の欠片


斎藤side



正直自分でも驚いた。


ここにくる前はひたすら人を斬り捨てる

事しか考えていなかった俺が、自分から

女を抱き寄せるなんて。



今までに女に言い寄られる事は何度もあ

った。

だが、元々女になど興味が湧かず、あま

りにもしつこい女は斬り殺してしまった

事もあった。

自分で言うのも何だが、俺はかなり血の

気が多い部類の人間だと思う。


そんな俺が......



一体俺は何がしたいのだろうか、椿をみ

ると心の奥底に渦が巻き苦しくなる様

だ....


自分の腕の中に居る椿はすっかり寝に入

ってしまった。目尻には涙の後が薄っす

らと残っており、寝息をたてる椿は俺の

着物の袖をしっかりと掴んでいた。



ここは本来なら女がいていい場所ではな

い。



いつか.....いや、もう既に...か。



この過酷な環境がこいつを苦しめる。そ

れならいっそここから追い出してもっと

こいつにふさわしい場所に行かしてやる

べきではないのか...?



でも俺はそれすらも出来ない....椿を手

放す事が恐ろしくてたまらない。




いっそのこと俺の腕の中に閉じ込めてお

きたい。




そんな事を思う俺はどこかおかしいのだ

ろうか....
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