華の欠片
「………斎藤………………………」
普段殆ど無口の斎藤だが、今日はいつも
の倍以上に口数が多い。
しかもいつも冷静沈着の斎藤が取り乱し
て私の肩をグラグラと揺さぶっている。
「斎藤………?」
もう一度呼ぶと正気を取り戻したのか、
私の肩から手を離した。
「すまない………らしくなかったな…」
「……いや、此方こそ迷惑かけて済まな
かった」
そういうと斎藤は頭を冷やすと言って何
処かへ行ってしまった。
斎藤に抱きしめられた温もりが今でもは
っきりと残っている……
何故だか私の火照った頰の熱が冷めない
……
私はその温もりを噛みしめるようにその
場にうずくまり一筋の涙を流した。
人の温もりをまじかで感じたのはいつぶ
りだったろうか……
とても暖かかった……
斎藤はとても暖かかった……