サヨナラのしずく
「ナオと付き合ってた頃はまだ椿連合にいたんだよ。俺は喧嘩することばっかり考えてた」




俊平はあたしの肩へと久し振りに腕を回し、自分の肩にあたしの頭を乗せる。




「ナオはそんな俺の心配ばっかしてた。いつか喧嘩で死んでしまうんじゃないかとか、自分から俺が離れていくんじゃないかって。今の俺みたいだろ?」




俊平があたしの頭を自分の肩に乗せさせたのは、顔を見られたくないからじゃないかと思った。



だって話をしている俊平は、今まで聞いたことのないくらい掠れた声で悲しそうな声に聞こえる。




「でもいなくなったのはナオの方だった。いきなり俺の前から姿を消した」


「なんで?」





俊平があたしがいなくなることに不安を抱くのは、このせいだと思った。



「理由は今もわからねぇ。ナオがいなくなって数ヵ月後、ナオは死んだからな」




死んだ…?


ナオさんが…?





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