サヨナラのしずく
俊平はわかっているんだ。



それでも、あたしの口からちゃんと聞きたいんだと思う。



あたしもタクミさんに何を言われて慰められても、俊平の言葉で大事に思われているんだって感じたい。





「マミは昔付き合ってた女の妹で、我が儘でヒステリックなとこがあるから優しくしてたけど、お前が嫌ならもう優しくしない。雫を優先する」


「うん。…昔付き合ってた人ってどんな人だった?」


「あいつは今の俺みたいだった」


「あいつって呼ばないで!」




自分が我が儘だってわかっているけど、あいつとか、お前とか、こいつとか、そんな身内を呼ぶような言い方を他の女の人にしてほしくない。




「名前で呼ぶのはいいか?」


「なんて名前?」


「ナオ」


「うん。名前ならいいよ」




俊平はあたしの頭を撫でながら「すげぇ我が儘」って言って話し出した。




< 145 / 358 >

この作品をシェア

pagetop